虫も殺さない

人間、どうせなら優しい方が良い

ジダンとマテラッティと女性用下着について

今回の記事は、私の後悔の記憶についてです。

 

皆さんはジダンというサッカー選手が試合中に相手チームの選手へ頭突きをした騒動を覚えていますでしょうか。

私も最近ふと思い出しましたが、調べてみると2006年FIFAワールドカップ決勝のイタリア対フランス戦で起こったことで、もう14年ほど前のことらしいです。

確かに、私はまだ小学生で、10歳か11歳ぐらいだった記憶があります。

 

なぜ当時のことを覚えているかというと、友達との間で「ジダンッ!」と言いながら頭突きをするのが流行ったからです。

同じようなことをしていた方もいるのではないでしょうか。

なにも本気で攻撃をするわけではなく、悪口やムカつくことを言われたら頭突きをし、相手もそれを甘んじて受け入れるという遊びです。

実際、ケンカになりそうなこともお互い笑ってすませられるのですから、いま思えば、なかなかに画期的なシステムでした。

さすがサッカー選手、さすがフランス代表ですね。素晴らしいです。

 

ただ小学生の遊びですから、すぐに飽きがきました。

ニュースで取り上げられることも段々と少なくなっていたでしょうし、ジダンを呼びながら頭突きをすることしかできないのですから仕方のないことです。

しかし、子供の遊びに対する貪欲さはなかなか侮れないもので、我々はとある人物に目をつけました。

ジダンの頭突きを受けたイタリア代表、マテラッティです。

学校でジダン頭突きを受けた人間はマテラッティにちなんで「殴っティ(なぐってぃ)」、「蹴っティ(けってぃ)」と言いながらの反撃が許されるようになりました。

誰が始めたのかは分かりませんが、もはやルールになっていました。そんなもんです。

 

そしてあの日、私の記憶に深い後悔が生まれた日、

普段あまり遊ばない子がジダン頭突きを受けました。

遊ばないとはいえ同じ教室でのことですから、彼はなんとなくルールを理解しており、反撃のパンチを繰り出しながら大きく叫びました。

 

「パンティ!!」

 

彼がルールを破ったのは誰の目にも、あるいは耳にも明白でした。

いま思えば流しても良いような、どんなに重く見積もってもイエローカードで済むようなことですが、まだ幼く性に対して免疫のない私たちは、彼の反則に過剰に反応しました。

大勢で笑い、からかい、必要以上に彼を傷つけたのです。

 

性に対して敏感だったのは彼も同じだったはずなのに、私たちは相手の気持ちを考えることができていませんでした。

もしあの日に戻れるのなら、彼の隣に立って「俺もパンティは大好きだ」と言いたい。みんな同じだと、君は1人じゃないと伝えたい。

 

彼のような思いをする人を1人でも減らすために、私たちは相手の立場になって考えること、思いやりを持たなければいけません。